美術修復修行中。


by jaimeleschiens
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カテゴリ:平日( 41 )

滞在許可証更新申請

聖ヒエロニムスの傍らの生き物、シンボル事典で調べたら、やっぱりライオンでした。

さて、今朝、朝イチに、アトリエ主から「滞在許可証の件で、県庁から連絡があった。」という知らせで、やっとできたか、今年は遅かったなあ、と思ったら、違いました。「法律が変わった。今まで通りの申請ではだめになった。」とのことで、不安いっぱいのまま、新たなパネル数枚から古いアタッシュ痕をハンダで取り除く作業。


午後、県庁からアトリエへ、申請の不備書類を知らせるFAXが届いたのですが、そのうちのいくつかの書類は、この前すでに提出したもの。なぜ再提出?アトリエ主曰く「いい加減なんだよ。」
あとは、私の口座のある銀行のサインの入った残高証明が手許に来れば全部の書類が揃うのですが、とても直接出向くことのできない、はるか遠く離れた、しかも午前中しか営業していない超ド田舎支店なので、来週いっぱいに送られて来るかどうか...。

でも、県庁からの知らせが今日でラッキーでした。
明日からアトリエ主夫妻は一週間の海外旅行に行ってしまうので、もし明日この知らせが来ていたら、うやむやになったまま滞在許可証更新も不可能になってしまっただろうと思います。
今までにも、こういった、ぎりぎりのところで連絡や通知が来て、なんとか切り抜けられたということがたびたびあるので、見守っていてくれたご先祖様に感謝。

午後はこうして、申請書類にかなり時間を費やし、ようやく作業に戻って、聖ヒエロニムスのパネル二枚に、ウ゛ェルジェットをくくりつけるためのアタッシュをハンダでつける作業。ウ゛ェルジェットを固定する位置を事前にきちんとメジャーで測って、1mmの狂いもなくハンダ付けしました。
その後は、個人所有の大型パネル4枚セットのネットワイヤージュ(nettoyage 洗浄)。「NEW DES 3%」という液体で、汚れを丁寧に取り除く作業です。
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by jaimeleschiens | 2006-06-15 22:57 | 平日

ホワイト・スピリット

今日も朝から、昨日の「パンチュール・ア・フロア」の続きです。
これにほぼ一日。衣服の肘の部分の影付けもなんとか終了、聖ヒエロニムスの足下にいる犬だかライオンだかわからない動物も、輪郭を辿っていきながら結局最後まで犬だかライオンだかわからないまま、とりあえず「生き物」として終了。あとでシンボル事典かなにかで調べてみたいと思います。
一日中ホワイト・スピリットを嗅いでいた上に、使用後の筆類一式を油性絵の具がすべて落ちるまでホワイト・スピリットで何度も何度も洗ったりしたため、臭いが鼻に残って、なんだか夕飯を摂る気がしません。車酔いするほうなので、こういった油の臭いはどうも...。
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by jaimeleschiens | 2006-06-14 22:19 | 平日
今日は昨日のパネルのオリジナル・ピエスの、グリザイユが施されていないほうの面に、「パンチュール・ア・フロア(PEINTURE A FROID)」(=焼きつけない絵付け) をしました。丸一日、アトリエの北側の壁(一面ガラス張りになっている)にパネルを立てて、自然光を背に、少しずつ黒の油性絵の具を乗せて影の濃淡を出していきます。しょっちゅうではありませんが、こういった方法も、たまにとられます。

やっぱり難しいのが、衣服の影付けです。
特に、肘を曲げた部分の影の流れ。
それも、自分で全部創作するのなら問題ないんですが、オリジナルが微妙に残っていて、しかもそれがもともとあまり上手でない絵だったりすると、その絵に合わせるのが難しい。

実際、けっこうあるんですね、どう贔屓めに見ても、これはちょっと...なパネル。
「自家製焼きたてパン」のパン屋が必ず美味しいパン屋だとは限らないのと同じで、ステンドグラス工房も、昔も今も、ピンからキリまであるわけです。

また、面白いことに、絵付けが上手なパネルは鉛線の組み立てがいい加減で、完璧に組まれているパネルはなぜか絵付けがいまいち、という不思議な相関関係があります。なんででしょう。
前に、歯医者さんで「歯が丈夫な人は歯肉が弱くて、歯肉が強い人は虫歯になり易い」というのを聞いたことがありますが、それと同じかどうか。
世の中なんでもバランスなんですね。

さて、今、もうすぐ18歳になる、なぜか弁髪の少年が、パリからこのアトリエに今週一週間の研修に来ています。
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今晩、アトリエ主ご夫妻の友人二人(美術史家と、修復家)が、アトリエ主の奥さんの仕事(やはり絵の修復)の関係でアトリエ主宅に一泊することになり、この美術史家さんには前に一度お目にかかったことがあるので、私も食事に呼ばれたのですが、この少年と美術史家とが甥とおばの関係だったことを食事の半ばまで知らず、いやあ、そういうつながりだったのかあ、と、なんというか、しみじみと、こう、思うものがありました。
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by jaimeleschiens | 2006-06-13 23:59 | 平日
今日は、まず朝一番に、今まで絵付けをしていたパネルに補強棒(ウ゛ェルジェット VERGETTE)をくくりつける作業。

前に載せたシャルトル大聖堂の窓の裏側の写真で、複数の細い金属棒やくさびや金属板がくっついているのが見えると思います。この細い金属棒が「ウ゛ェルジェット」、くさびを「クラウ゛ェット CLAVETTE」、クラウ゛ェットのついた金属板を「フォイヤール FEUILLARD」といい、また、この写真からは見えませんが、もともと窓には、各パネルの大きさに合わせて金属の骨組みがなされていて、これを「バルロチエール BARLOTIERE」といいます。バルロチエールとフォイヤールは必ず対になっていて、この両者でパネルを挟み、クラウ゛ェットで留めて固定します。
フランスでは、どんなに小さい教会でも、窓はほぼこの形式です。

ウ゛ェルジェットはパネル一枚につき普通は数本つけますが、その前にまず、8〜10cmに切った銅線をハンダで必要箇所に留めて(attache アタッシュといいます)、そこにウ゛ェルジェットを置いて、このアタッシュでしっかりくくりつけます。

これは慣れればなんてことない作業なのですが、私は、前にほんの数回やったきり半年振り以上の作業だったので、今回は思いのほか時間がかかってしまいました。

これが終わったあとは、この県内のある教会のパネルの修復作業に移りました。
このパネルは、聖ヒエロニムスが描かれているのですが、オリジナルの絵付けの損傷が激しくて輪郭しか残っていないため、今回は、修復が必要な箇所の複製を作って、その複製ピエスにコパーフォイルを巻き、それをオリジナルの上に数カ所をハンダで点止めして被せてしまうという方法をとっています。これを「doublageドゥブラージュ」と呼びます。普段は行わないやり方ですが、たまにこういうパネルを見かける時があります。

また、コパー・フォイルをガラスに巻き付けてハンダゴテをするというやり方は、日本ではすっかりお馴染みの「ティファニー」そのものですが、フランスでもこれを「ティファニー」、動詞では「ティファニゼ tiffaniser」と呼び、修復作業で重要な要素のひとつとなっています。

現在、モニュモン・イストリックのステンドグラスに関しては、割れたガラス片の修復に、一応次のような決まりがあります。

割れたガラス片同士が、もともとオリジナルの一枚のピエスで、割れたときのまま、何も加工されていない状態
 → 割れ目をエポキシ樹脂でコラージュ(collage 張り付け)。

割れたガラス片同士が、もともとオリジナルの一枚のピエスで、割れ目の一方または双方が、部分的に削られたりカットされたりと、何かしら加工されている。つまり、過去、すでに修復が施されている。
 → 割れ目で加工されていない部分をティファニー

割れたガラス片同士の片方はオリジナルだが、もう片方はまったく別のガラスが組まれている。つまり、過去、すでに修復が施されている。
 → ガラス片同士をできるだけ幅の小さい鉛線でつなげる。

これは、審美的意味のほかに、保存・修復の観点で、後世にパネルの修復状態を伝えるという重要な意味も含まれています。

今回、複製ピエスはすでに職人さんの手によって作られていて、私がするのはただティファニゼだけですが、日本人はコパーフォイルを巻くのが上手いと思われているようで、よく「ティファニゼよろしく♪」と頼まれます。実際、コパーフォイルを巻く作業は好きです。
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by jaimeleschiens | 2006-06-12 22:06 | 平日
ここ数日、なぜかログインができず、直接このブログのアドレスへ移動しても「まだ作成されていないブログです」って、なんで?

作成されているでしょ、5月末から。

いったい何が起こったのか。
ブログを開始してから、日々の雑記帳は白紙だったので、いやあ、焦りました。
やっぱり、きちんと紙にも記録しておくべきですね。教訓。

さて、その間にも絵付けを重ねていた修復パネルは、ほぼ修復完成間近となりました。

火曜日は、顔料の色を変えて影を作って焼き、
水曜日は、火曜日と同じ色でさらに濃淡をつけて焼き、
木曜日は、黒の顔料を薄く重ねてくすみを出して焼き、
金曜日は、パネルにはめ込んで自然光で色合いを確かめました。

ここで、簡単に「顔料」の説明をしたいと思います。
顔料には大きく三つの種類があり、それぞれ「グリザイユ grisaille」「ジョーン・ダルジョン jaune d'argent」「エマイユ email (eはアクソン・テギュ付き)」と呼びます。どれも600度前後で焼くとガラス化する絵の具です。

グリザイユは古い時代から使われてきた顔料で、今では数多くの色がありますが、もとは、色ガラスの上に茶色か黒のグリザイユで絵や模様の輪郭を描くのに使われてきました。フランスでは代々、茶色のグリザイユが主流です。シャルトル大聖堂の12世紀のパネルも、茶色のグリザイユです。焼き付けの温度は約620度で、焼き上がりは、ほぼ描いたまま、まさに「焼き付いた」感じで、表面はざらざらしています。

14世紀に入ると、ステンドグラス界に大革命が起こります。「ジョーン・ダルジョン」の出現です。これによって、絵付けの表現方法が飛躍的に発展します。
ジョーン・ダルジョンとは直訳すると「銀の黄色」。塩化銀と黄土を混ぜて液体で溶き、ガラス上に乗せてグリザイユと同温度で焼くと、その部分のガラスの中に黄色が入り込みます。現在では硫化銀と塩化物との混ぜものが使われます。

パネルが制作された時代を判断するのも、ジョーンダルジョンが使われていれば間違いなく14世紀以降のものであるとわかります。

16世紀半ば頃、新たな顔料が現れます。それが「エマイユ」です。焼き付ける時は、色によって温度を設定しますが、これがけっこう難しい。実際に焼いてみないと、どんな色になるかわかりません。
焼き上がった表面はつるりと滑らかで、ガラスの絵付けの可能性をさらに広げました。

ですが、修復作業では、通常はグリザイユとジョーン・ダルジョンが絵付けの基本です。

今回の一連の絵付け作業も、ずっとグリザイユ。木曜日で一応グリザイユは終わりましたが、現時点ではまだ完成ではなく、衣服部分のオリジナルのピエスの外側に残存しているエマイユの腐食痕との兼ね合いで、修復ピエスにもう一度処理を施すことになっています。
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一方、シャルトル大聖堂のパネル調査は、状態チェックの作業を水曜日に終え、コンピューターでの細かいデータ化作業に移りました。
ここから先は、「歴史的建造物」(モニュモン・イストリックmonument historique )ということで、残念ながら非公表です。しかたがありませんね。

木曜日、金曜日は、別の15世紀のモニュンモン・イストリックのパネルの汚れ落とし作業です。
汚れ落としといっても、水道水で洗い流したりするような恐ろしいことはしません。
特別に調合された液体をつけて特定の汚れを浮かし、蒸留水をしみ込ませたコットンで丁寧にその汚れを取り除いていきます。とても時間がかかり、地味な中でもさらに地味な作業ですが、それぞれのピエスを観察するにはもってこい、至福の時です。
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by jaimeleschiens | 2006-06-09 23:49 | 平日
何人かの方から、コメントの仕方について教えてほしいとのメールをいただいたのですが、ほんと、どうしたらいいのでしょう?
私も、いろいろと試してみたのですが、よくわかりません。
パスワードがどうの、とか、なんですか、これ?
誰でもコメントができるわけではないんでしょうか?
どなたか、教えてください。

それから、今、フランスと日本との時差は7時間(冬は8時間)。で、仕事が終わって、所用を済ませて、一息ついてからパソコンに向かうと、ブログ投稿がいつも一日ズレてしまうんですね。その日の行動と曜日が一致しないのは、私としてはとても気持が悪い。ということで、日にちを修正しました。今日は6月3日、土曜日です。

さて、今日は週末なので、普通に休みです。
私の食糧が底をついて大ピンチだったので、今日は朝から、5キロ離れた雑貨屋へ、徒歩で買い出しに行ってきました。

一面麦畑の一本道を、ひたすら前へ進みます。
丘も二つほど越えます。
しかも、今日は今までにない晴天で、朝からアスファルトの照り返し。
ようやくついた雑貨屋で、保存のきく乾物を中心に買い求め、それを背負って、もと来た道をまた歩きます。

たかが5キロ、されど5キロ。
往復で10キロ。

村に戻る頃には、もう、ひと仕事を終えた気分でした。
また、外の燃えるような暑さとは裏腹に、石造りの古い家の中は冷え冷えとして、冷蔵庫そのもの。
汗だくで帰ってきた私は、家に入った途端、寒くなって身震いしてしまいました。
午後は、なんだかボーッとして、冴えない半日でした。

毎週土曜日、いつもは親切ご近所さんに、ここから12キロ離れた街の朝市に連れて行ってもらっているのですが、今はバカンス中で村を離れているため、今日はこうして自力で食糧調達してきた次第。つくづくご近所さんのありがたみを感じました。

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by jaimeleschiens | 2006-06-03 22:36 | 平日

カフェの時間

このアトリエでは、午前10時半から11時位までの間、アトリエ内にある小さな台所で「カフェの時間」があり、誰かが全員分のコーヒーなり紅茶なりを用意して、「カフェ!」と叫ぶと、誰もが仕事の手をとめて集まってきます。

今日、この時間に、アトリエ主がなにやら賞状を持ってきました。
5月31日付けで、フランス政府からのものです。
みんな興奮していました。
なんでも、優良アトリエに選ばれたようです。
めでたいことですね。
コーヒーのしみが付いたりしないようにテーブルをよく拭いて、そこに賞状を置いて、みんなで囲んで眺めました。

さて、今日久し振りに、高技術の絵付けを目にしました。
威風堂々の男性とその奥さんらしい胸像の絵付けが施された、19世紀パネル2枚セットです。
アトリエ主宅の隣人夫妻が、骨董屋で買い求めたといって持ってきました。
大きな破損があるのと、鉛の組み方がいまいちなので、150ユーロで手に入ったとのことでした。
アトリエ主は「いい買い物をしたね。」と言っていましたが、本当に、よくできた絵付けです。まるで写真そのものを見ているのような絵付けですが、けっして写真をもとにしたのではなく、あくまでもデッサン。間近で見れば見るほど、緻密な筆運びに驚きます。陰影の付け方なんて、完璧です。写真に納めたい。

ほかの職人達も「こりゃすごいね。」と。

前に、絵付けは失敗ができないと書きましたが、正確には、

「失敗したら、顔料を全てガラスから落として、もう一度一から書き始める」

ということで、せっかく途中まで上手くいっても、最後にほんのちょっとでもミスがあれば、それまでの作業は全部水の泡。その部分だけ消して書き加えるということができないのです。
なのでまあ、失敗リスクを少なくするために、ちょっと描いては焼き、ちょっと描いては焼き、ということを繰り返すわけですが、そういう点でも、この胸像パネルは、脱帽モノです。

ガラスの厚さも7、8ミリはありますかね。
べつにガラスが厚いから高級云々というのではないんですけれど、あまりに厚くてびっくり。
「この時代に、こういう絵付けにこんなに厚いガラスを使うのは珍しいよ。イギリスなんかにはあるけれどね。」
と、アトリエ主が言っていました。

でも、なんというか、日本人的感覚からすると、なんの血のつながりもない赤の他人の肖像画を買ってきて、自分の家に飾ってしまおうというのが、なんともね...。
しかも、肖像画の二人はそれぞれ斜めに視線が流れているんですが(それでも充分気味が悪い)、周りを囲む飾りの、目をカッと見開いてこっちを凝視している巫女風オーナメントが、コ、ワ、イ、ヨ...。

ちなみに、この隣人さんは、ご夫婦揃って古生物学者(PALEONTOLOGISTES パレオントロジスト)で、アフリカのチャドから出た人類の祖先(名前失念)なんかを扱う方々です。昨年の愛知万博でも、トヨタがスポンサーの会場でなにやら出展してきたとのこと。マンモスが飾られていたブースだそうです。

とまあ、こういう方々なので、こういったパネルも怖くないのかな、と思いながら、「これ、フツーに家に飾るんですよねえ?」と職人達に尋ねると、「そうだよ、なんで?」と、フツーの返答でした。
...こういうところにフランスと日本との文化の違いを感じます。


また、長い前置きでしたね。

今日の私の仕事は、いつもと変わらず、まず絵付け。
相変わらず襞の部分ですが、今日は、一段進んで、影の濃淡をつけます。
こういうのはわりと得意なので、カフェの前には窯入れ終了。
その後はまた、シャルトルのパネル調査の続きです。

一昨日は一枚、昨日は二枚、今日は...
三枚できました!
今日扱ったパネルは、二枚が人物の顔、一枚がキリストの胴体の部分で、比較的分かりやすかったというのもありましたが、職人さんの、
「昨日、シェール川( le Cher ル・シェール)で弟が198センチの巨大ナマズ(Silureスィリュール)を釣ってねえ、今日これから食べにいくんだよ♪」
なんていう話を聞く余裕もできました。

さて、今度の日曜日は、キリスト教のペンテコステ(La Pentec冲e ラ・ポントコト)で、その翌月曜はまた、職人達はお休みです。
私は、たぶん、仕事をすると思います。
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by jaimeleschiens | 2006-06-02 22:59 | 平日

今日は、アトリエ主がパリへ会議に出掛けたので、絵付け作業はお預け。
朝からシャルトルのパネル調査をしました。
今日も相変わらず一枚に半日、計2枚しかできませんでしたが、今日一日が終わる頃には、これらのパネルを作った12世紀の職人の、鉛線の組み方の癖に馴れてきたような気がします。
おもしろいことに、たまにハンダ付けが忘れられている箇所があったり、たぶん本当はまっすぐに組みたかったところを、ガラスカットに失敗して斜めにしちゃったらしい箇所があったり、すでに修復が行われている箇所も、なんでこんな色のガラスを充てはめちゃったかな?なんていうのがあったり、笑えます。
それにしても、一枚一枚、ものすごく重い。
もっと新しい時代のものとは比較にならないくらいどっしりしていて、ちょっと移動するにも、「ぃよいしょっ」という感じです。
今回改めて目にすると、ガラスの厚さは、今どきのものとはあまり違わないんですね。
でも、本当に重い。ガラスの成分の違いなんでしょうけれど。
今度、資料を探して、調べてみようと思います。

さて、このアトリエでは、事務室前にある小さな庭に、アトリエ主の犬が二頭、放されています。どちらも大型犬で、なかなか迫力があります。
今日は、職人さんの一人が、飼い始めた4ヶ月になる子犬を連れてきて、庭に放して二頭に面倒を見てもらっていました。
いいな、こういうの。
私も連れてきたい。
私もいつでも日本から犬を連れてきていいと言われているのですが、フランスへ入るのは簡単なんですけれど、日本へはどうも容易に戻れないらしいことが、調べるうちにわかってきて、結局諦めました。

フランス入国の条件は、すでに成犬の場合、IDチップを挿入していることと、指定ワクチン接種後40日以上一年以内であることの証明と、日本出国前の健康診断書くらい。
でも、日本へ帰国するには、滞在国出国前の健康診断書はとりあえずとして、滞在国内での採血検査とか、滞在国内待機6ヶ月とか、日本への帰国40日前までに所定用紙を届けるとか、なんだかいろいろ手続きがあって、海外での必要滞在日数を数えてみると、少なくとも7ヶ月は、ウチの犬は日本へ帰れないらしいんですね。
(間違えていたらすみません。)

タンタンとミルーのように、いつもどこへ行くのも一緒、というようなことができたら幸せなんですけれどね。
(ミルーとは、スノーウィのことです。こちらでは「ミルー」と呼ばれています。)
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by jaimeleschiens | 2006-06-01 22:34 | 平日

利き手

今日の最初の仕事は、
焼き上がった昨日のガラス片のうちの、衣服の部分にあたる五枚に、
襞の影になる太めの線を施していく作業でした。
基本的には、昨日の線引きと同じですが、
今回は、さらに太めに、さらに濃いめに、ひと筆書きです。

今日も縦からスーッと、やってもやっても、
ぶれちゃったり、曲がっちゃったり、
全然ダメでした。
え〜い、じゃ、反対の手で!
と、右から左に持ち替えて、勢いで一本引いてみたら、

あれ?うまくいくじゃん!

試しにもう一本。
あれ?またうまくいった。

あっという間に、全部引き切ってしまいました。

やっぱり、左利きなのか。
...ん十年生きてきて、いまさらですが。

小さい頃から、歯を磨くのと、消しゴムを消すのは、左。
ボール投げも、左のほうが遠くまで飛ぶんですね。
(って、たいして飛びませんが。)
昨年一度だけバスケボールでドリブルをすることがあって、
右手でやったら、ボールがどっかへ行ってしまった...。
でも、左手で、あっちまで行けて、こっちまで帰ってこられた。

腕組みするときは、右手が前になることが多いですね。
たまに左が前になっていることもあるんですが。

どうなんでしょう?

そういえば、ガラスカットやハサミや筆は右ですが、
ガラスの絵付けのときに、
ガラスの表面から少しずつ顔料を落として濃淡をつける作業など、
微妙さが要求される時は、左手が頑張っているような気がします。

まあ、どちらの手でも、そのときに使い易いほうを上手に使って、
結果が良ければそれでよろしい。

さて、そのあと、
なんと私も、シャルトルのパネル調査の仲間入りです。

パネルごとに縮小図を4枚用意し、四つの観点で調べていきます。

1. 12世紀当時の鉛線をトレースし、鉛線の幅が8ミリ以上のもの、7ミリのもの、6ミリ以下のものに色別する。

2. すでに修復が施されている箇所のつなぎ目の鉛線をトレースし、1. と同様に色別する。

3. 割れた状態のガラス片の割れ目をトレースし、ガラスの損失している部分を塗りつぶす。

4. 鉛線が劣化で切断されている部分に印をする。

職人さん達は、こういう作業に馴れているので、どんどん進んでいきますが、
私は、ずいぶん前に一度、練習でやったことがあるきりなので、
一枚のパネルに午後いっぱいかかってしまいました。

でも、こういう調査は、大好きです。
私のパネルは、少なくとも過去に2回、修復作業が施されていることがわかりました。
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by jaimeleschiens | 2006-05-31 22:20 | 平日
今日から、ここのアトリエの職人達は、
普段のステンドグラス修復の仕事に加えて、
シャルトル大聖堂のステンドグラス調査開始です。

シャルトル大聖堂を訪れたことのある方は、教会の身廊をゆっくり歩きながら青いステンドグラス窓を眺めているうちに、ところどころ、ベニヤで覆われて真っ暗になっている窓に気付かれたと思います。

その窓は、諸事情でステンドグラスが取り外され、代わりに、風雨を防ぐために窓一面をベニヤで覆ってしまったものなのですが、私のお世話になっているこのアトリエも、シャルトル大聖堂のステンドグラス修復事業に参加していて、昨年10月、教会内陣の、長さがおよそ縦12.5メートル×横2.2メートルの窓から、全部で51枚のパネルを取り外し、代わりに51枚のベニヤを貼って、またひとつ真っ暗な窓を増やしてきたのでした。

ちなみに、ステンドグラスの窓は、けっして巨大な一続きのガラス窓なのではなくて、両手で持てるくらいの大きさに作られたステンドグラスが何枚も組み合わさって、一つの窓が形成されています。

その、一枚一枚のステンドグラスを「パネル」と呼んでいます。
フランス語では「panneau パノー」と言います。

下の写真は、10月のパネル取り外し作業の時に撮影したもの。
ステンドグラス窓の外側は、こんな風になっています。
b0108483_4124635.jpg


で、うちのアトリエ担当の51枚のパネル、
12世紀に作られたもので(日本だったら鎌倉時代あたりですね)、当時の技術柄、とても厚くて重たいんです。
馴れた職人でも、
窓づたいに螺旋階段前まで運んで一旦呼吸を整えて、
螺旋階段の途中の小部屋まで運んで一旦呼吸を整えて、
螺旋階段を降りきって、階段ドアの鍵を開けてから最後の呼吸を整えて、
教会の扉を開けて車へ運び込む。

とまあ、とても一気に運べないほど重くて、
これを51枚分、繰り返して繰り返して、
今思えば、あれは重労働でした。

その時は、シャルトル大聖堂のステンドグラスを自分の手で触れているというのが、なんというかもう、言葉に表せないくらい感動で、夢中で抱き上げてましたけどね。

ただ、長年の塵が積もって、パネルの表面は煤だらけで、ちょっと触れただけで真っ黒け。
チビ助日本人の私は、全身で運び出していたので、
一緒に運んでいた職人が、興味津々で寄ってきた人々に
「ほら、この黒いのが、長年積もった煤ですよ♪」
と私を指さし、一同大笑いで納得していました。

...と、ここまで前置きでした。
長いですね。
すみません。

さて、そのパネル達、じつはガラスの劣化が甚だしくて、もはや修復の余地が無いんです。
でも、パネルの状態を調査ノートに表して後生に残すというのが大きな目的で、アトリエに運び込んで7ヶ月間の御蔵ののち、今日からいよいよ、本格的な調査に入ったのでした。

...でも、私は、昨日の続き。

焼き上がったガラス(7枚)の上に、さらに絵付けを加えていくんですが、午前中は、そのうちの一枚の、楕円状のガラス片(長軸20センチ、短軸15センチくらい)に活字体で文字を書き列ねていく作業(マックの14ポイントくらいのサイズ)と、手の平サイズのガラス片に背景模様を描く作業。

こういうの、大好き。
文字を書く作業は、あとで肩にきますけれど、燃えます。

出来上がったところを職人が見に来て、
口々に「パッフェッ!(完璧♪)」
って言われた。

...じつは私、納得していません。
顔料の水加減によって筆遣いを微妙に調整しながら書いているうちに、
「F」の字の下のほうが太っちょになってしまったとか、
「S」の字の丸みが妙だとか、
できることなら、書き直したい...。

でも、アトリエ主に「んなこたあ、いいんだ」
と、窯へ持っていかれてしまい、終了。

午後は、残りの5枚のガラス片(衣服の一部に当たる箇所)に、襞(ひだ)の線を引いていく作業。
日本の書道の小筆の、もう少し毛を長くしたような筆で、3ミリくらいの線を30センチほど縦にスーッ、スーッと引いていく姿を想像してみてください。
途中、太くなったり細くなったりしてはダメです。

...私、これ、苦手です。
上から下に30センチも、同じ細さでスーッとなんて、
日本の書道で、そんなの習ったことないもんね。

結局、何回やっても埒が明かなくて、
最後はとうとう、自分の身体を方向転換して、左から右へ引くことにして、終了。
くやしい妥協でした。
練習しないと。

今はみんな、窯の中。
もう焼き上がって、あとは、寝ながら、明日の朝までに徐々に冷えていくのを待ちます。

今日の私の仕事は、内容的にはこれだけですが、
時間は飛ぶように過ぎてゆき、あっという間の一日でした。

一連の作業を写真に納めてブログに載せたいところですが、
デジカメが壊れて使えない。
なんとか新しいのを手に入れたいけれど、
交通手段が無くて、この村を出られません。
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by jaimeleschiens | 2006-05-30 22:31 | 平日