美術修復修行中。


by jaimeleschiens
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グリザイユ/ジョーン・ダルジョン/エマイユ

ここ数日、なぜかログインができず、直接このブログのアドレスへ移動しても「まだ作成されていないブログです」って、なんで?

作成されているでしょ、5月末から。

いったい何が起こったのか。
ブログを開始してから、日々の雑記帳は白紙だったので、いやあ、焦りました。
やっぱり、きちんと紙にも記録しておくべきですね。教訓。

さて、その間にも絵付けを重ねていた修復パネルは、ほぼ修復完成間近となりました。

火曜日は、顔料の色を変えて影を作って焼き、
水曜日は、火曜日と同じ色でさらに濃淡をつけて焼き、
木曜日は、黒の顔料を薄く重ねてくすみを出して焼き、
金曜日は、パネルにはめ込んで自然光で色合いを確かめました。

ここで、簡単に「顔料」の説明をしたいと思います。
顔料には大きく三つの種類があり、それぞれ「グリザイユ grisaille」「ジョーン・ダルジョン jaune d'argent」「エマイユ email (eはアクソン・テギュ付き)」と呼びます。どれも600度前後で焼くとガラス化する絵の具です。

グリザイユは古い時代から使われてきた顔料で、今では数多くの色がありますが、もとは、色ガラスの上に茶色か黒のグリザイユで絵や模様の輪郭を描くのに使われてきました。フランスでは代々、茶色のグリザイユが主流です。シャルトル大聖堂の12世紀のパネルも、茶色のグリザイユです。焼き付けの温度は約620度で、焼き上がりは、ほぼ描いたまま、まさに「焼き付いた」感じで、表面はざらざらしています。

14世紀に入ると、ステンドグラス界に大革命が起こります。「ジョーン・ダルジョン」の出現です。これによって、絵付けの表現方法が飛躍的に発展します。
ジョーン・ダルジョンとは直訳すると「銀の黄色」。塩化銀と黄土を混ぜて液体で溶き、ガラス上に乗せてグリザイユと同温度で焼くと、その部分のガラスの中に黄色が入り込みます。現在では硫化銀と塩化物との混ぜものが使われます。

パネルが制作された時代を判断するのも、ジョーンダルジョンが使われていれば間違いなく14世紀以降のものであるとわかります。

16世紀半ば頃、新たな顔料が現れます。それが「エマイユ」です。焼き付ける時は、色によって温度を設定しますが、これがけっこう難しい。実際に焼いてみないと、どんな色になるかわかりません。
焼き上がった表面はつるりと滑らかで、ガラスの絵付けの可能性をさらに広げました。

ですが、修復作業では、通常はグリザイユとジョーン・ダルジョンが絵付けの基本です。

今回の一連の絵付け作業も、ずっとグリザイユ。木曜日で一応グリザイユは終わりましたが、現時点ではまだ完成ではなく、衣服部分のオリジナルのピエスの外側に残存しているエマイユの腐食痕との兼ね合いで、修復ピエスにもう一度処理を施すことになっています。
b0108483_22331893.jpg

一方、シャルトル大聖堂のパネル調査は、状態チェックの作業を水曜日に終え、コンピューターでの細かいデータ化作業に移りました。
ここから先は、「歴史的建造物」(モニュモン・イストリックmonument historique )ということで、残念ながら非公表です。しかたがありませんね。

木曜日、金曜日は、別の15世紀のモニュンモン・イストリックのパネルの汚れ落とし作業です。
汚れ落としといっても、水道水で洗い流したりするような恐ろしいことはしません。
特別に調合された液体をつけて特定の汚れを浮かし、蒸留水をしみ込ませたコットンで丁寧にその汚れを取り除いていきます。とても時間がかかり、地味な中でもさらに地味な作業ですが、それぞれのピエスを観察するにはもってこい、至福の時です。
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by jaimeleschiens | 2006-06-09 23:49 | 平日