美術修復修行中。


by jaimeleschiens
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カフェの時間

このアトリエでは、午前10時半から11時位までの間、アトリエ内にある小さな台所で「カフェの時間」があり、誰かが全員分のコーヒーなり紅茶なりを用意して、「カフェ!」と叫ぶと、誰もが仕事の手をとめて集まってきます。

今日、この時間に、アトリエ主がなにやら賞状を持ってきました。
5月31日付けで、フランス政府からのものです。
みんな興奮していました。
なんでも、優良アトリエに選ばれたようです。
めでたいことですね。
コーヒーのしみが付いたりしないようにテーブルをよく拭いて、そこに賞状を置いて、みんなで囲んで眺めました。

さて、今日久し振りに、高技術の絵付けを目にしました。
威風堂々の男性とその奥さんらしい胸像の絵付けが施された、19世紀パネル2枚セットです。
アトリエ主宅の隣人夫妻が、骨董屋で買い求めたといって持ってきました。
大きな破損があるのと、鉛の組み方がいまいちなので、150ユーロで手に入ったとのことでした。
アトリエ主は「いい買い物をしたね。」と言っていましたが、本当に、よくできた絵付けです。まるで写真そのものを見ているのような絵付けですが、けっして写真をもとにしたのではなく、あくまでもデッサン。間近で見れば見るほど、緻密な筆運びに驚きます。陰影の付け方なんて、完璧です。写真に納めたい。

ほかの職人達も「こりゃすごいね。」と。

前に、絵付けは失敗ができないと書きましたが、正確には、

「失敗したら、顔料を全てガラスから落として、もう一度一から書き始める」

ということで、せっかく途中まで上手くいっても、最後にほんのちょっとでもミスがあれば、それまでの作業は全部水の泡。その部分だけ消して書き加えるということができないのです。
なのでまあ、失敗リスクを少なくするために、ちょっと描いては焼き、ちょっと描いては焼き、ということを繰り返すわけですが、そういう点でも、この胸像パネルは、脱帽モノです。

ガラスの厚さも7、8ミリはありますかね。
べつにガラスが厚いから高級云々というのではないんですけれど、あまりに厚くてびっくり。
「この時代に、こういう絵付けにこんなに厚いガラスを使うのは珍しいよ。イギリスなんかにはあるけれどね。」
と、アトリエ主が言っていました。

でも、なんというか、日本人的感覚からすると、なんの血のつながりもない赤の他人の肖像画を買ってきて、自分の家に飾ってしまおうというのが、なんともね...。
しかも、肖像画の二人はそれぞれ斜めに視線が流れているんですが(それでも充分気味が悪い)、周りを囲む飾りの、目をカッと見開いてこっちを凝視している巫女風オーナメントが、コ、ワ、イ、ヨ...。

ちなみに、この隣人さんは、ご夫婦揃って古生物学者(PALEONTOLOGISTES パレオントロジスト)で、アフリカのチャドから出た人類の祖先(名前失念)なんかを扱う方々です。昨年の愛知万博でも、トヨタがスポンサーの会場でなにやら出展してきたとのこと。マンモスが飾られていたブースだそうです。

とまあ、こういう方々なので、こういったパネルも怖くないのかな、と思いながら、「これ、フツーに家に飾るんですよねえ?」と職人達に尋ねると、「そうだよ、なんで?」と、フツーの返答でした。
...こういうところにフランスと日本との文化の違いを感じます。


また、長い前置きでしたね。

今日の私の仕事は、いつもと変わらず、まず絵付け。
相変わらず襞の部分ですが、今日は、一段進んで、影の濃淡をつけます。
こういうのはわりと得意なので、カフェの前には窯入れ終了。
その後はまた、シャルトルのパネル調査の続きです。

一昨日は一枚、昨日は二枚、今日は...
三枚できました!
今日扱ったパネルは、二枚が人物の顔、一枚がキリストの胴体の部分で、比較的分かりやすかったというのもありましたが、職人さんの、
「昨日、シェール川( le Cher ル・シェール)で弟が198センチの巨大ナマズ(Silureスィリュール)を釣ってねえ、今日これから食べにいくんだよ♪」
なんていう話を聞く余裕もできました。

さて、今度の日曜日は、キリスト教のペンテコステ(La Pentec冲e ラ・ポントコト)で、その翌月曜はまた、職人達はお休みです。
私は、たぶん、仕事をすると思います。
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by jaimeleschiens | 2006-06-02 22:59 | 平日