美術修復修行中。


by jaimeleschiens
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シャルトル大聖堂ステンドグラスパネル調査。

今日から、ここのアトリエの職人達は、
普段のステンドグラス修復の仕事に加えて、
シャルトル大聖堂のステンドグラス調査開始です。

シャルトル大聖堂を訪れたことのある方は、教会の身廊をゆっくり歩きながら青いステンドグラス窓を眺めているうちに、ところどころ、ベニヤで覆われて真っ暗になっている窓に気付かれたと思います。

その窓は、諸事情でステンドグラスが取り外され、代わりに、風雨を防ぐために窓一面をベニヤで覆ってしまったものなのですが、私のお世話になっているこのアトリエも、シャルトル大聖堂のステンドグラス修復事業に参加していて、昨年10月、教会内陣の、長さがおよそ縦12.5メートル×横2.2メートルの窓から、全部で51枚のパネルを取り外し、代わりに51枚のベニヤを貼って、またひとつ真っ暗な窓を増やしてきたのでした。

ちなみに、ステンドグラスの窓は、けっして巨大な一続きのガラス窓なのではなくて、両手で持てるくらいの大きさに作られたステンドグラスが何枚も組み合わさって、一つの窓が形成されています。

その、一枚一枚のステンドグラスを「パネル」と呼んでいます。
フランス語では「panneau パノー」と言います。

下の写真は、10月のパネル取り外し作業の時に撮影したもの。
ステンドグラス窓の外側は、こんな風になっています。
b0108483_4124635.jpg


で、うちのアトリエ担当の51枚のパネル、
12世紀に作られたもので(日本だったら鎌倉時代あたりですね)、当時の技術柄、とても厚くて重たいんです。
馴れた職人でも、
窓づたいに螺旋階段前まで運んで一旦呼吸を整えて、
螺旋階段の途中の小部屋まで運んで一旦呼吸を整えて、
螺旋階段を降りきって、階段ドアの鍵を開けてから最後の呼吸を整えて、
教会の扉を開けて車へ運び込む。

とまあ、とても一気に運べないほど重くて、
これを51枚分、繰り返して繰り返して、
今思えば、あれは重労働でした。

その時は、シャルトル大聖堂のステンドグラスを自分の手で触れているというのが、なんというかもう、言葉に表せないくらい感動で、夢中で抱き上げてましたけどね。

ただ、長年の塵が積もって、パネルの表面は煤だらけで、ちょっと触れただけで真っ黒け。
チビ助日本人の私は、全身で運び出していたので、
一緒に運んでいた職人が、興味津々で寄ってきた人々に
「ほら、この黒いのが、長年積もった煤ですよ♪」
と私を指さし、一同大笑いで納得していました。

...と、ここまで前置きでした。
長いですね。
すみません。

さて、そのパネル達、じつはガラスの劣化が甚だしくて、もはや修復の余地が無いんです。
でも、パネルの状態を調査ノートに表して後生に残すというのが大きな目的で、アトリエに運び込んで7ヶ月間の御蔵ののち、今日からいよいよ、本格的な調査に入ったのでした。

...でも、私は、昨日の続き。

焼き上がったガラス(7枚)の上に、さらに絵付けを加えていくんですが、午前中は、そのうちの一枚の、楕円状のガラス片(長軸20センチ、短軸15センチくらい)に活字体で文字を書き列ねていく作業(マックの14ポイントくらいのサイズ)と、手の平サイズのガラス片に背景模様を描く作業。

こういうの、大好き。
文字を書く作業は、あとで肩にきますけれど、燃えます。

出来上がったところを職人が見に来て、
口々に「パッフェッ!(完璧♪)」
って言われた。

...じつは私、納得していません。
顔料の水加減によって筆遣いを微妙に調整しながら書いているうちに、
「F」の字の下のほうが太っちょになってしまったとか、
「S」の字の丸みが妙だとか、
できることなら、書き直したい...。

でも、アトリエ主に「んなこたあ、いいんだ」
と、窯へ持っていかれてしまい、終了。

午後は、残りの5枚のガラス片(衣服の一部に当たる箇所)に、襞(ひだ)の線を引いていく作業。
日本の書道の小筆の、もう少し毛を長くしたような筆で、3ミリくらいの線を30センチほど縦にスーッ、スーッと引いていく姿を想像してみてください。
途中、太くなったり細くなったりしてはダメです。

...私、これ、苦手です。
上から下に30センチも、同じ細さでスーッとなんて、
日本の書道で、そんなの習ったことないもんね。

結局、何回やっても埒が明かなくて、
最後はとうとう、自分の身体を方向転換して、左から右へ引くことにして、終了。
くやしい妥協でした。
練習しないと。

今はみんな、窯の中。
もう焼き上がって、あとは、寝ながら、明日の朝までに徐々に冷えていくのを待ちます。

今日の私の仕事は、内容的にはこれだけですが、
時間は飛ぶように過ぎてゆき、あっという間の一日でした。

一連の作業を写真に納めてブログに載せたいところですが、
デジカメが壊れて使えない。
なんとか新しいのを手に入れたいけれど、
交通手段が無くて、この村を出られません。
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by jaimeleschiens | 2006-05-30 22:31 | 平日